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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

「じゃあ?」
「うん。命を心配するほどのことではない、たぶん。だけどさ、これでも私、女なんだよね……」
「!」
「左胸を触ると、しこりがふたつあって……ひとつは結構大きくて、ひとつは小さいけど乳首のすぐ近く……つまり、手術は全摘になるだろうって」
全摘という言葉に聞き覚えはないけど、話の流れから、その意味は理解できた。それを裏付けるように、岸井さんは更に生々しく語る。
「おっぱいがさ、ひとつなくなっちゃうんだ。アハハ、きっついよねー。これは男のキミには、絶対にわからない気持ちだと思う」
「……」
「だから、私は――手術を前後する、この間――せめて好きな人に、見守られていたいと願っている」
「すいません。辛いことを、僕なんかに……」
「別にいいよ。こっちこそ絡んじゃってゴメンね。それと晶の部屋に泊まるのは、とりあえず今夜だけだからさ」
「岸井さん?」
「あとは、二人で話した後、その結論に従うよ」
「それで、いいんですか?」
「ふふ、お人よしすぎだよ、キミ。つまり私は、晶にすがることをあきらめてないってこと」
彼女はそうして話を終え、レジ袋を持って店を後にしようとする。
「あの――岸井さん」
呼び止めた僕を振り返り、屈託のない笑顔を向けた。
「キミと話ができて、よかったよ」

