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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章  タモツ 


「はあ?」

 不快そうに眉根を寄せた態度に、怯まないように話を続ける。

「誰だって最初はそうだと思うんです。だけど、生きていると厳しいこともあるから、綺麗事だけじゃどうにもならない時があると思う。時には手段を選ばずに、無茶なこともしなければいけない。今の、岸井さんみたいに……」

「なっ――」

 言葉を挟みかけながら、岸井さんはそれをしなかった。

 岬ちゃんのことが気になるからとか、相手は病気で大変だからとか。そんなことを言い訳に、ここから退こうとする。それでは卑怯だと思った。

「やっぱり僕と美里さんのことは、二人で話して決めます。でも、できれば、岸井さんの事情も、もう少しだけ詳しく話してもらえませんか?」

 彼女は驚いたように僕を見つめてから、さっきまでと違う静かな口調で語りはじめる。

「乳がん、だってさ」

「!」

「私の年齢だと、とても稀らしいよ。なんで、よりによって私なのって……ずっと落ち込んだけど、そうしていても病気は待ってくれないから……来月、手術をするんだ」

 僕がその病気について、詳しくしるはずもないけど……。

「幸い、自分で気づいて発見が早かったから、他の場所に転移してる可能性は低いだろうって……。手術を受け持つ総合病院のお医者さんも、経験も実績も豊富な人みたいだから」

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