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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均

「はあ……」
昨夜、あの場面を岬ちゃんに目撃されたことを思い返し、思わずため息を吐く。
結局、岬ちゃんが去った後は、なんとなく互いに気まずさを覚えて、美里さんはそのまま一人で帰っていった。当然、キスはしてない、けれど。
あの場面を傍から見た岬ちゃんの目にそれがどう映ったのかは、本人に聞いてみないとわからないことであるし、あのまま岬ちゃんが登場しなければ、流れのままにキスしていた可能性を僕は否定しきれないのだ。
どの道、岬ちゃんには既に最後通告を受けた後。それも美里さんとの件を言い訳するまでもなく、僕自身のそれまでが完全否定された格好だから余計にダメージが大きい。
あれこれ考え頭を抱えていると、レジの前に人影が立ったのに気づき、慌てて顔を上げた。すると――
「昨日は、どうもね」
いつものように缶コーヒーを手にした美里さんが、いつになくしおらしい顔つきで言った。
さっきまで話をしていた先輩はといったら、美里さんの目を意識してか、雑誌コーナーの商品を見栄え良く並べ直したりして懸命に仕事をしている(フリをしているのかな……)。
「山本くんのお陰で、助かったちゃった。ありがとうね」
「いえ、僕はなにも……」
「ううん、とても心強かったよ」
「そ、それなら……よかったです」
僕は照れを隠すように、缶コーヒーのバーコードを読み取った。

