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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章 岬?

「――とにかく、もう引き返してください。わたしのことなんか、すべて忘れてしまっていいんです。もう二度と、コンビニにも行きませんから」
「だけどっ、それじゃあ、食べるものとか困るんじゃ……」
「ふふふ……コンビニなんて行かなくても、ネットであれ宅配であれ、どうにでもなりますから」
私はわざと微笑を浮かべて、平然と嘘を言った。
均くんは暫く俯いた後で、顔を上げるとこんな風に訊ねてくる。
「み……岬ちゃんのこと、僕が気にかけたら、迷惑?」
「前にも言いました。余計なお世話です、と」
「じゃあ……岬ちゃんにとって、僕は必要じゃない?」
「必要、ありません」
わたしは淀みなく、そう答えた。それを合図とするように、均くんは呆然としたまま部屋を後にしようとする。
でも、部屋を出る前に振り返り、視線を下に落としたまま言う。
「ひとつだけ……いい」
「?」
「ちゃんと食べて、変な気を起こさないように……それだけ、約束」
最後にちらりと向けた目に、わたしが小さく頷くと。
――バタン。
ドアが、二人の間を閉ざした。
「ごめんなさい……」
一人きりの部屋で届かない言葉を告げると、切なさに耐えかね、一人きりで泣きはじめた。
でも、どうにもならない……。
悲しくてやるせないのは、全部自分のせいなのだから。
【第四章・終わり】

