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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章   岬? 


「だ、だけど……」

「生まれてくるはずの〝岬〟の人生を、わたしは奪ったんです。すべては自分の身勝手な行いのせいで」

「それは違うよ! 身勝手で非道なのは、さっきの動画の男で!」

「それでも、わたしは自分のことが許せません。だから、わたしは自分の人生を〝岬〟にあげようと考えました」

「み、みさき……に?」

 わたしのことを、そう呼ぶのを彼ははじめて躊躇しているようだった。

「均くんに名前を告げる時に、はじめて〝岬〟の名を語りました。均くんに対して感じたときめきを、なかったはずの――いいえ、あったはずの岬の人生に捧げたかった。ほんの少しでも彩ってあげたいと思った。なのに――」

「なのに?」

「それはすべて、自分のときめきを正当化するための方便。誤魔化しだったんです。やっぱり、わたしはわたしでしかないから。この胸がときめいて嬉しくなるほどに、ずっと申し訳なかった。結局、わたしは〝岬〟にはなれなかったんです」

 なにを喋っているのか、自分でも見失いそうになる。だけど、仕方がないのだろう。言葉で言い表すのが困難なくらいに、わたしの心の中はぐちゃぐちゃになってしまっている。

 明らかなのは、自分が最低な人間であるということだけ、だから。

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