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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章   岬? 


 今のわたしが、彼ら二人を妬むことなんて滑稽の極み。均くんの話そうとする「事情」を聞くのが少しだけ煩わしく感じて、言葉を遮るように核心に踏み込んだ。

「均くんはあの人のことが、好きなんですか?」

「え? 別にそんな風には――」

「だけど、あの人は均くんのことが好きみたいですよ」

「ま、まさか……」

 均くんは驚いたように、こちらをまじまじと見つめていた。

 だけどこちらとしたら、美里さんという美女が均くんを好きでも、均くんが誰を好きでも、もうそんなのは自分に関係ないこと。

 結局、わたしは〝岬〟になり損ねてしまっているから。

 ならば、自分が二人と同じ舞台に立てると考えることこそ、思い上がりであることは十分に思いしっている。

 だから、やはり話そうと思う。心の内に秘めた過去を。短い夢を終わらせるためにも。

 均くんに、わたしという害悪の一端をしってもらって、さっぱりと見限ってもらうためにも。

「均くん……わたしの名前、しってますか?」

「えっと……み、岬ちゃん?」

 均くんは探るようにこちらを見ながら、そう答えた。

 当然だろう。わたしはその名しか語ってないのだし、今まではそう呼ばれることを望んでいたのだから。だけど、今は――

「違います。それは、わたしの本名ではありません」

「じゃあ……?」

「弘前彩佳(ひろさき あやか)」

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