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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第3章  たもつ 


    ◆    ◆


 数時間後――。

「…………?」

 僕が見守る中、岬ちゃんがゆっくりと目を覚ました。

「大丈夫? あ、いいよ。そのまま寝ていて」

「た、均くん……わたし?」

「ごめんね。僕が無理言って、外に連れ出したりしたから」

「……!」

 そこまで話したところで、岬ちゃんはレストランで気を失ったことを思い出したらしかった。今はアパートの部屋に戻って、自分のベッドに横たわっている。

 あの後、僕一人で岬ちゃんを連れ帰るのは、とても大変なことだった。

 周囲の客たちが声を上げると一気に店中に騒ぎが広がり、駆けつけた店長が「お客様、大丈夫ですか? すぐに救急車を――」と、従業員に指示を出そうとした。

 だけどこの時点で、岬ちゃんはまだ気を失っていたわけじゃなく。抱き起した僕の胸の中に顔を埋めて、なにかを呟きガタガタと身体を震わせていた。

「岬ちゃん、なに?」

 僕が、消え入りそうな声に耳を傾けると――。

「み、見ないで……わたしのこと、見ないで……おね、がい」

 朦朧(もうろう)とした意識で、そう必死に懇願する姿を目の当たりにした。

「ま、待ってください! 事情があるんです。お願いですから、騒ぎを大きくしないでください!」

 僕は必死で店の人や周囲のお客さんを宥めると、迷惑をかけたことを謝りながら、岬ちゃんを抱えて店を後にしていた。

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