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セイドレイ【完結】
第53章 落日
「...え~、では宴もたけなわ、ここであらためて私達の新しい仲間であります市川さんから、今後の抱負についてなど...簡単で良いので、一言頂きたいと思います。じゃ、市川さん、どうぞ...」

それから約2時間が経過し、歓迎会も終盤に差し掛かったところで、亜美は〆の挨拶を促される。

一斉に亜美に注がれる視線。

睨みつけるような安藤とは対照的に、男性社員達は皆どこか鼻の下を伸ばしているように見える。

亜美はただならぬ緊張の中、その場に立ち上がると短く深呼吸をして、挨拶を始める。

「...えっと...きょ、今日は皆様お忙しい中、このような場を設けて頂きましたこと、心より感謝申し上げます...。まだまだ分からないことだらけで皆様にはご迷惑ばかりお掛けしていますが、1日でも早くお役に立てるよう、精一杯頑張らせていただきます。今日は本当に、ありがとうございましたっ...」

そう言って一礼をすると、拍手が湧き上がった。

(とりあえず...無事終わって良かった...)

亜美はホッと胸を撫で下ろす。

安藤を含め、女性スタッフ達とはギスギスした約2時間だったが、それ以外は特段何事も無く終わった。

懸念していた大川については、積極的に亜美に絡もうとしないばかりか、逆に不自然な程一度も目を合わせようともしなかった。
他の役員連中は皆おおらかで、セクハラと思しき発言もあるにはあったのだが、亜美はさほど気に留めていなかった。

また、この4月に新卒で入社した正社員の木下裕貴(22)は、亜美と同世代ということで、比較的話が弾んだのは収穫と言っていいだろう。

(悪いことばかりじゃない...頑張らなきゃ...)

少量ではあるが慣れない酒に少々酔っていた亜美は、帰宅しようと安藤の姿を探すも、見当たらない。

(あれ...?もう先に行っちゃったのかな...?)

そう思い店の外に出るも、やはり安藤の姿は無い。
そこへ、役員の一人が亜美に声を掛ける。

「市川ちゃん、俺らこれから社長も含めて2軒目行くけど、一緒に行かない?」

「...あ、いえ...私、安藤さんに乗せてってもらうことになってるので...せっかくですがご遠慮させて...」

「え?安藤さんならもう、とっくに帰っちゃったよ?他のスタッフ送ってく~とか言って」

「...え?う、嘘...そんなっ...」
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