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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

「──ご主人様」
そのとき、背後から声がした。
聞き覚えのある声に、慎二が恐る恐る振り返ると──。
そこに立っていたのは、目隠しとイヤホンを外し、コートを羽織った亜美だった。
「──あっ、亜美っ!?!?」
慎二はすぐさま亜美に駆け寄り、強く抱きしめた。
「亜美っ!!大丈夫かっ!?ケガはないっ!??あいつになんかされなかった!??亜美っ!?亜美ぃ──」
「──ご、ご主人様……く、くるし…い…」
「よかった…よかったっ!無事でよかった!!…田中さん!!居ました!!無事に戻りました!!」
すると、別の場所を探していた田中があわてて駆け寄ってくる。
(あっ…あの人が──)
ここで亜美は、初めて田中の姿を見た。
慎二ほど肥えていないものの──メタボ体型で眼鏡をかけており、見るからに冴えない風貌である。
「──ハッ…ハァッッ…、よ、よかったですねっ…ハァッ…、一時はどうなることかと…」
「うん…。あ…亜美、この人は田中さんって言って…えっと…その──」
「あ…はい。田中さん…はじめまして。ご主人様の奴隷の…亜美と言います」
あんなことがあった直後であるのに、なんの躊躇もなく自身を "奴隷" だと言い、田中に礼儀正しくあいさつをする亜美。
「田中さんはご主人様の… "信者" さん…なんですよね?ご心配おかけしてすいません。無事に戻りました…」
「い、いえ…ぼっ、僕はなにもっ…。あ、田中と申します。先ほどはどうも…っていうのも…なんか変な感じ…。とっ、ところで、大丈夫でしたっ??おケガはなかったですっ??」
「あ…はい…大丈夫…です。怖かったですけど…大声出したら逃げて行ったので…」
「…そそ、そうですか。ならいいんですが…。それにしても…師匠、あのタカってヤツは何者なんでしょうか…?」
「うーん…それが、住んでるとこが県内ってだけで、それ以外はなにも…。しまったなぁ…もっとちゃんと聞いておくべきだった…」
貴之が今日、どうやってここへ来たのか気になる亜美は、それとなく慎二に聞いてみる。

