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身代わりの夜
第13章 出張夜の部下指導
 もう一口、ビールを飲む。
 会場で出会った村木のことが思い出された。

 口ぶりからして、亜沙子とつき合っていたのは間違いない。
 洗練された物腰と、見るからに有能そうな風貌。
 上司に似合いの相手として、かねて想像していた通りの男だった。
 少なくとも外見は。

 梨華が言っていた、今のポストにつくときに別れたという恋人かもしれない。
 二人の様子を見ると、ずいぶんとしこりが残っているみたいだ。

 村木の言葉が耳の奥にこだまする。

 ――ベッドじゃ、とんでもない乱れようなんだ。

 十日前の淫戯が思い出された。

 オフィスで全裸になった美人上司は、啓太が唖然とするくらいの、まさに「とんでもない乱れよう」を見せた。
 日頃の知的で冷静、負けん気の強いキャリアウーマンからは想像もできない恥態だった。

(あの男の前でも、亜沙子さん、いつもあんな風に……)

 嫉妬にも似た暗い想念が胸に渦巻く。

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