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第56章 あなたを愛しているから……

送ってもらうこと以外、何も聞いていなかったから他に許されていることさえ知らなかった。


「それってなんですか……？」



「許されているのは、乙羽を口説くことだ」


「口説くって……」


予想していなかった答えに少し動揺して表情を変えずにいた眉をひそめた。


でもこれが、ずっと気になっていた私の知らない二人の交わした約束なんだと思った。



「ただし、乙羽に触らずに口説いてみろと言われた」


「……そうですか。私の彼氏がそんなことを……」


「だから乙羽がオレのことを好きになるまで、オレは触れることができない。……一度は約束を破ってしまったがな」


「私の彼氏を裏切ってしまった罪っていうのは、忘年会の時のことですよね？」


「ああ、そうだ……。乙羽を抱いてしまったことだ」