この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
アムネシアは蜜愛に花開く
第2章 Ⅰ 突然の再会は婚約者連れで

***
ルミナスは総勢三十四人の社員と重役五人を収容する、品川にある六階建ての持ちビルを本社として、ゆとりある設計がなされた、実に快適な職場環境だ。
ルミナスでは、技術や知識が求められる化粧品の研究や管理検査や製造は、静岡の工場で一括して請け負っており、わたしが通うルミナス本社には司令塔とも言うべき商品開発部と営業部と総務部がある。
総務部は由奈さんがいる秘書課と経理課と庶務課に分かれ、営業部では商品を陳列するドラッグストアなどの新規開拓やプロモーションを行う営業課と、代理店を管理する管理課がある。
商品開発部は商品の企画をしたり広告を考える広報企画課と、化粧品のパッケージなどをデザインして形にするデザイン課、そして顧客のニーズに応えるコンサルタント課の三つに分かれている。
わたしが配属されているのは、商品開発部の広報企画課で怜二さんはそこの課長だ。
広報企画課も、ゼロから作り上げる純粋の企画と、出来上がったものに対してする広報と仕事が分かれているが、まだ経験不足のわたしは、広報にて出来上がった商品を勉強しながらその特性をどう媒体に訴えればいいのか、日々頭を悩ませてながら、提携しているデザイン会社や広告代理店と打ち合わせをしている。
化粧品は初動も大事ではあるが、リピーターを増やさないといけない。
特にルミナスは、中高生という若い女性をターゲットにしているため、どうすれば口コミで拡がるものなのか、実際市場に出てアンケートをとったりと生の声を聞かねば、ジェネレーションギャップによって思いもかけない惨敗も記することもある。
つまりわたしが携わっているのは、わたしがとうに通り過ぎた一幕を彩るものであり、そこから十年も遠ざかった自分の老け具合をしみじみと感じてしまう、哀愁籠もった仕事でもある。

