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あの星に届かなくても
第5章 走りだした焦燥

***

 閉店間際に入店した年配の男性客は、ペットの餌を買い込んだ。慧子がレジ担当をしているときに決まってお喋りをしてから帰るその人は、今夜は話し足りないのか閉店時間を過ぎても飼い猫の話を続けた。自ずと従業員の帰る時間がふだんより遅くなった。

 明かりの落とされた店を出て、駐輪スペースで自転車の鍵を出そうと上着のポケットを探っていると、そばに立つ外灯の光がふと消えた。

「わっ……」

 とっさに声をあげた慧子の隣で、紗恵も周囲の暗さに驚いている。

「真っ暗! こわーい」
「ああ、時間になると勝手に消えるようになってるんですよ」

 暗闇の中で市川の低い声が聞こえた。

「やだぁ、急に喋らないでよ」

 本気で迷惑そうな声を発した紗恵は、「じゃ、お先に」と言ってさっさと自身の車のもとへ向かう。色気と可愛らしさを兼ね備える彼女にふさわしい海外の高級コンパクトカーの赤色も、この暗闇の中ではその鮮やかさを認識できない。

「じゃあ私も……」

 市川と二人きりの空間に小さく呟きを落とし、慧子は上着のポケットの奥を探る。

「あれ?」

 入れてあるはずの鍵がない。ズボンのポケットかと思い、ごそごそしていると、市川の気配が近くに寄った。

「どうした」
「あの……鍵が」
「失くしたの?」
「いつもポケットに入れておくんですけど。あれれ、バッグの中かな……」

 リュックを肩から下ろし、ファスナーを開け中身を手探りで触っていくもそれらしい感触に当たらない。唸りながらかき回していると、頭上から青白い光が降った。市川が携帯のライトで照らしてくれたのだ。

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