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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第5章 不安

◇◇◇
「…………」

陸にはああ言ったが、本当は俺自身が千弥の後を追いたかったと思うほどには、焦りを感じている。
俺一人だけ……。
千弥と陸は、同じ会社で同期の同部署。しかし外様の俺は時間が合わず、こうして待つのが常。ほとんどが個人仕事の俺では、タイムスケジュールというものがバラバラ。こんな風に、夕方前から時間が空いてしまうことだって多数ある。

(クッキング番組のコーディネートだったからね)

フードコーディネーターも、仕事ジャンルは様々。千弥たちのような店の監修もあれば、番組コーディネート、CM撮影、料理教室のメニュー作りまで、内容は幅広い。
そもそもこのマンションを占拠した理由は、広いキッチンで好きに対象の料理を試すことが出来、なおかつキッチン中央の作業台で試し撮りなども可能だから。こんな俺に都合の良い勝手な動機から、親にごり押ししてまでマンションを確保したが理由。

「まさか次のスケジュールが明日に変更になるとは……。本当にタイミングが悪い」

お陰でこう早い時間から、マンションで待つことになってしまった。これでも必要な食材を購入し、ゆっくりと帰宅したつもりだけど、思った以上に待つ時間は長い。

「せっかく、番組収録で余った牛肉を貰って来たのに、普段より遥かに帰りが遅いなんて」

この手は、料理の差し替えが当たり前の世界。何度も同じ料理を作るので、食材はかなり多めに用意してあり、終われば全て破棄になる。最近はそれが勿体なく、こうして貰って来るのがクセになってしまった。

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