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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第17章 彼なりのケジメ

「狭くて暗い塀の中で、自らのした事と向き合って欲しかった。自分がどれだけの事をしたのか、その罪は刑期になるとどう表されるのか。それをしっかり分かった上で、ちゃんと向き合って欲しかった。」
「──だから、俺が病院から出た所をこいつらに捕まえさせるつもりだったなんだな。で、そのまま最寄りの警察に受け渡す、と。そうだろ?」
「ええ。」
やっぱりこいつは馬鹿だけど、馬鹿の仮面を被っていた『弟』だ。
人並み以上に色々な経験をしてるだろうし、自分のために必死になるユンサを近くで見てきている。
だからこそ、こういう場面になればここまで理解が早く、冷静で居られる。
「確かに……確かに、アンタ達兄弟には何度も言う様に生い立ちからして同情の余地はある。」
「でも、だからと言って……はい、じゃあ人生リセットで頑張りなさい。と背中を押して見逃せるほど、私も優しくはない。」
「だから──」
「だから、今までとは百も違う世界でしっかりと向き合って来て。自分のした事の酷さと。」
「それが私がアンタらに殺されていった人達に出来る自分なりのケジメと、アンタ達二人に出来る『自分なりの優しさ』だと思ってる。」
イルトのお父さんの側近と思われるスーツを着た男達に腕を捕まれて、病室を後にするイヴァンの背中を見つめた。
「なあ、」
「何?」
振り向かない彼、だけど足は立ち止まっている。
「アンタにまるで、守る様に抱き締められた時に思ったよ。──俺にも兄貴にも、必要だったのはアンタみたいな広い心を持つ、強く逞しい女だったかも、って。」
「それがオンマなのか、彼女なのかは分からないけどな。」

