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堕天使 1st gig.
第9章 少年
家に入るなり、リナが俺にしがみついて来た。これ以上の心配をかけたくない俺はリナに

『暑いんだろ?』

と普通に笑って聞いていた。リナはいつもの不安で泣きそうな顔になり

『何があったの?』

と聞いて来る。俺は出来るだけ笑って

『24時間でテロ2件を片付けただけだ。さすがに疲れたがな。』

と答えていた。リナは俺の服を力いっぱい握って

『なら、なんでアルトは泣きそうな顔するの?』

と聞いて来た。泣きたかった訳じゃない…、俺が助けてやっても、その命は無駄に消え、そんな無駄な事をする俺がリナに不安を与え続けている事実が辛かっただけだった。

俺はエアコンの温度をリナの好きな温度に設定してからリナをベッドに連れて行く。リナが

『身体冷やすと困るんでしょ?』

と俺に聞いて来るから俺は

『お前に避けられる方が嫌なんだよ。』

と答えてリナにキスをしていた。助けてやっても勝手に命は消えて逝く…。いつもそうだ…、俺の周りは勝手に消えて逝く奴ばかりだ。

リナもいつかそうなるのかもしれない…。そんな不安を考えたくないのに考えてしまう。今までなら、どうせ消えて逝くならと無関係、無関心を貫いて来た。

でも、リナには違う。リナは俺が居ないと生きていけない状況だった。そして、リナはなんでも我慢して俺に合わせようとする。そんなリナに無関係や無関心をする事が俺は出来なかった。

だが、今は?

今は、リナもそれなりに生きていける。だから、そんなリナが俺になんか合わせてられないと俺の前から居なくなる不安が俺は辛かった。

リナに何も約束なんかしてやれないくせに俺はリナを失う事に怯えていた。だけどリナが俺の背中にしっかりと手を回し、まるで俺の存在を確認するように全身で俺にしがみつき

『必ず帰って来てくれれば、それでいいから…。』

と呟くように言っていた。俺の不安がリナにちゃんと伝わっていてリナはそれに応えようとリナなりに必死なのが俺に伝わっていた。

ただリナの頬や額にキスを繰り返し、俺はずっとリナを抱きかかえているだけだった。
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