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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ

穏やかな横顔で瑛二さんは淡々と言うから、褒められているのかと理解するのに数瞬かかった。
世界の作り方。つまり
「支配力を、養えと」
「そう」
目下私に足りないもの。如何に自分の世界に相手を引き込むか。
「瑛二さんのもいいけど結衣子さんのも見たいな。前は自分がされたし、こないだは途中からだったし」
「話は付けてある。来週だ」
「早っ。予想でもしてたみたい」
「そりゃどっちもセンセイみたいなもんだからな」
ホテルの駐車場に車が吸い込まれる。
指定の場所。変態夫婦、ケンさんとシホさんのお手伝い。車から降りてエレベータで上がり、部屋の前。インターホンを鳴らした。
挨拶と顔合わせを軽く済ませ、瑛二さんがベッドの足元とサイドの2箇所にカメラをセットする間、私は縄を点検する傍ら彼ら夫婦を見る。
ケンさんはネクタイをかっちりと締めた真面目そうな男性で、シホさんは38とは思えないほど童顔で小柄な可愛らしい女性。
左手薬指にはお揃いのリング。彼が彼女を見る目はとても優しげだし、彼女が彼を見る目はとても愛おしそう。
「ルカ。あのソファの位置変えるから手伝え」
「はいはい」
瑛二さんについて一緒に広めの二人がけソファを移動させる。2点のカメラの間。何をしてもよく見える位置。
サイドテーブルには2本のミネラルウォーターとグラス。
「準備完了。縄は?」
「問題なし。7m4本枕元に」
「ありがとう。じゃ、ここから見とけ。ケンさん」
呼び掛けに彼はこちらを振り向き、歩み寄ってきた。
「始めようかと」
「はい、お願いします。千堂さん」
ケンさんはそう言って頭を下げ、ソファに座る。
私もその隣に座ろうかと足を向けかけた、けど
「ルカ。これ預かっといて」
「ん?」
瑛二さんに呼び止められ、そちらへ顔を向けた。
彼は着ていたシャツを脱いで私に差し出す。

