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遠い日の約束。
第13章 混在する記憶

───…
月明かりに照らされながら湖の周りを散歩する。
怖いはずの場所も今は何も感じない。
ここは美弥と葉月が結ばれた場所だから。
歩いていると美弥と葉月の話し声が聞こえてきた。
「ん?小屋にいるんじゃ?」
先ほどまで小屋で愛し合っていたはず。
だけど声が聞こえてきたのは反対側の湖の方からだった。
湖に目を向けると月の光に照らし出されたふたりの姿が目に入った。
こんな寒い中に…
そう思った瞬間、消えていた記憶は全て蘇ってくる。
今見てきたことが以外の全ての悲しみが私を包み、発狂しそうになる。
それだけに留まらず、これから怒る悲劇まで襲い掛かってくる。
ガタガタと身体は震え、今から起こるふたりの出来事に心が押しつぶされそうになる。
『────足の感覚なんて当の昔になくなってるよ。今更、岸に戻る力も残ってない』
葉月の言葉が風に乗ってはっきりと私の耳元に届く。
『もう戻ることはできない…だから一緒に逝こう?俺と、ずっと一緒にいて?』
『後悔…しない?』
ふたりの言葉は死を前にしては穏やかで、それでいて幸せそうに感じた。
だけど…それが幸せなんて残酷すぎる…

