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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice

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三十三階――。
入居者用のプールの女子更衣室で、あたしはフロントに一度寄った時に、フロントのお姉さんから借りた水着を出した。
――別に俺らふたりなんだから、一緒のところで着替えても……。
聞いていないふりをしていた須王の文句を思い出しながら、出した水着は――黒にワインの色の花がついた生地で、フリルが上にも下にもふんだんに使われている。
ちょっと色気を感じる大人テイスト。
あのフロントのお姉さんなら似合うかねしれないけれど、普通顔のあたしに合うかしらなどと、とりあえず着て、姿見で見てみた。
「……あたしの胸がないの? それともこういうデザイン!?」
紐で首の後ろに縛るタイプの上は、思ったより深いデザインをしていて、どんなに紐を引っ張りあげても、際どく……ぎりぎり乳輪が隠れるくらいの、胸の頂き部分を隠すような淫猥なもの。
そのフリルの下はブラのようなカップになっているから位置をこれ以上ずらすことも出来ないし、だとしたら必要以上に寄らされた胸の谷間を見せるデザインなのか。
さらに下と言えば思った以上に浅くて、いくらフリルが一段ついているといっても、茂みを申し訳程度に隠す感じで、フリルの下は紐で結ぶタイプだとはいえ、動いたら脱げてしまいそうだ。
これは色々やばい。
相手が超絶イケメンの須王だからこそ、このあまりにも似合わなすぎる姿を見せるわけにはいかない。
失望させてはいけない。
「柚、着替えた?」
今にもがちゃりと開けて入って来そうな須王に危機感を感じて、あたしは慌ててパーカーよりも先に出ていた、身体拭き用の大きなバスタオルを巻くと、直後にドアが開く。
「お前、ここはプールだぞ?」
「わ、わかってるよ」
間一髪セーフ!
「じゃあなんで、タオル巻いてるわけ?」
訝る彼はパーカーを羽織っているが、逞しい胸板を覗かせる姿は非常に……セクシーを通り越して、歩く凶器だ。

