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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

 私がいつ生まれたのか、なんて遠い記憶すぎて覚えていない。
 戦争があったり、時代が変わったり……いろんなことがあったけれど、食べるものには困らなかった。いつの世も、「女」を武器にすれば食事にありつける。そういうものだ。

 しかし、老いない体は存外、今の世では生きづらい。
 偽造された身分証を使って、私は「普通」の暮らしを手に入れた。けれど、二十歳そこそこの体の私は、化粧を施してもさすがに四十代までが限度。身分証を新しくすると同時に、生活も人間関係も、すべてリセットしている。
 私は、今、二十五歳。東京で派遣社員をやっている。

「荒木さん、頼まれていた資料できました」
「ありがとう、月野さん。今朝頼んだのにもうできたの?」
「仕事ですから」

 株式会社サキタの営業部を補佐するのが私の仕事だ。プレゼン用の資料を作ったり、見積書や納品書を作ったりする。営業部の社員から頼まれたことを淡々とこなすこの仕事は、悪くない。そう思って半年が過ぎた。

 荒木さんは営業部の若手社員で、かなり人懐こい性格の爽やか青年だ。しかもイケメン。
 常に後光が差しているかのように、キラキラと輝いている――のは、隣の席の美山さんの頭頂部も関係しているのかもしれない。美しく何もない山、だ。

 荒木さんは資料を確認して、頷く。そして笑顔を私に向けてくれる。その、困ったように笑う顔が、たまらなく好きだ。

「相変わらず月野さんの資料は見やすくてミスがないね。ありがとう、また頼むよ」
「い、いえ、そんな」

 褒められると嬉しい。それが、好きな人なら、特に。
 あぁ、やっぱ、一緒にケーキバイキング行きたいなぁ。チケットが二枚あると嘘をついて誘おうかな。彼と一緒にケーキを食べられるなら、チケットが高くても我慢しよう。

「あ、あの、荒木さん」
「うん?」
「そ、その」

 一緒にケーキバイキングに行きませんか?
 どうして、その一言が言えないのだろう。
 私とセックスして、なら簡単に言えるのに。

「ケーキ……」
「荒木くーん!」

 私のなけなしの勇気は、総務部の日向陽子さんの声によって打ち消された。手を振りながらこちらへ駆けてくる彼女の姿を見つけて、すぐに荒木さんに頭を下げて自分の席へと戻る。
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