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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

日向さんに目をつけられたくはない。
荒木さんと同期の日向さんは、彼のことが大好きなのだ。
荒木さんへの好意を隠そうともしない彼女は、ライバルの存在を許さない人だ。目をつけられたら、派遣社員なんてすぐ首を切られてしまう。
総務部と人事部は部署も隣で風通しが良い。実際、何人も、根も葉もない噂を理由に辞めさせられている。先輩の派遣社員さんから、彼女の仕業だと聞いてから、彼女とは距離を取っている。
美人で笑顔がかわいくて、オシャレでモテるのに、ものすごく恐ろしい人――それが日向さんだ。
「ねぇねぇ、今日は外回り?」
「いや、内勤だけど」
「じゃあ、ランチ一緒に行かない? 美味しいデザートビュッフェがあるとこ見つけちゃって」
「デザートビュッフェ……」
「種類も豊富なの」
「じゃあ、行く」
荒木さんはあっさりと承諾し、日向さんは私ができなかったことをあんなに簡単に成し遂げた。
彼女の底なしの積極性は、羨ましいとさえ思う。本当に、羨ましい。どうすれば荒木さんを誘えるんだろう。本当に、見習いたい。
『週末、暇? 土曜日なら空いてる』
宮野さんからのメッセージに、すぐ返事する。
『私も暇。土曜日の昼にいつものところでいい?』
好きでもない人を誘うことならこんなに簡単なのに、どうしてうまくいかないんだろう。
まだ仲良く喋っている二人を見て、ちょっとのヤキモチを押し込めて、深呼吸。
お仕事、お仕事。
週末の甘いものとホテル代のために、稼がなくちゃ!

