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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

 他愛もない話をしながら、ブレンドを飲み干して、伝票を取る。驚いた顔の宮野さんに、財布を見せて、笑う。

「安いけど、結婚祝い。今日くらいはご馳走させて」

 ブレンドコーヒー一杯の値段で結婚祝いだなんて、常識的にどうかと思うけど、私たちの関係は何かしらの形に残ってはいけないのだから、仕方ない。
 宮野さんはそれを了承してか、神妙な顔をして頷いた。そこで笑ってくれないあたり、宮野さんらしいなと思う。

「ありがとう」

 宮野さんの穏やかな声に、ほっとする。
 大丈夫。彼はちゃんと、前を向いて歩いていける。


◆◇◆◇◆


 帰宅するために駅のホームで電車を待っているとき、私の目の前をフラフラとしながら線路へ向かっていた男性が、宮野さんだった。

 自殺しようかどうしようか、まだ踏ん切りがつかないままフラフラしていたのは、すぐにわかった。思わず彼の腕を取って、その死んだような目と土気色の顔を見て、私の判断は間違っていなかったと感じた。

 すぐに宮野さんを連れて駅から離れて、近くのラブホテルに入って、奉仕しまくって、果てさせた。自殺未遂者になんてことをしたのかと、精液を搾り取ったあとで頭を抱えた。

 後先考えずに行動してしまった私は、自分を責めた。……ちょっとだけ。精液は美味しかったのだ。私の選別眼は確かなものだった。

 けれど、直後に宮野さんが号泣しながら事情を――銀行員の生涯給料ほどの大きな損失を出してしまったことを話してくれた。
 私は銀行の業務なんてわからないから、それをただ聞くだけだったのだけれど、それが良かったのだろう。話してスッキリしたのか、二回目をねだられた。

 宮野さんとは、そこからの付き合いだ。

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