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Oshizuki Building Side Story
第5章 Coloring in a moon

Syuu side
「――ということで解散。と、鹿沼、ちょっと残って」
「わかった!」
……こうして、結城さんがいまだ陽菜を特別に扱い、そして陽菜も躊躇うことなく結城さんの隣に座るのをみると、今でも嫉妬で苦しくなる。
仕事の話だとわかっていても。
「え、ちょっと待ってよ。だったら結城が大変じゃない」
背中越しに聞こえる彼女の声。
彼女の口から、彼女を好きでたまらなかった男の名前が出てくる度に、俺はいつもその会話を強制終了させていたことに、きっと陽菜は気づいていない。
「わかった。だったら一緒に行こうよ、打ち合わせ。結城の時間いいときに」
「マジ!? すげぇ助かるわ……」
「いいってことよ。そういうことなら、じゃんじゃんあたしに振って!」
同い年の同期の結束は、鋼よりも硬い。
それは、俺も知っていたけれど……。
白い天井を見上げて、俺はため息をつく。
白という色は他の色に染まらない色だから好きだけれど、僅かでも違う色が滲むと、一気にその姿を変える。
もしも結城さんが、いや結城さん以外の男が、陽菜の心に一滴……彼らの色を垂らしたら、陽菜はどんな色になるのだろうか。
俺は、他の色が多々混ざって姿を現す黒色にはなりたくない。
陽菜に影響を及ぼす、ただ1色の白でいたい。
ねぇ、陽菜。
俺だけを好きでいて。
この先もずっと。
仕事を好きな彼女を知りながら。
友達想いの彼女を知りながら。
彼女が愛してくれていると知りながら。
彼女を理解できるいい上司でいたいと願う俺は、同時に心では、子供のように駄々を捏ねている――。

