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Oshizuki Building Side Story
第5章 Coloring in a moon

結城と衣里の携帯電話が鳴り、ミーティングは一旦休憩となった。
杏奈は、渉さんの紹介で、数日前に補充したばかりの若い新鋭達に呼ばれて、席を外して、パーティションに隔離された空間には、あたしと朱羽だけになってしまう。
「なんだかんだいって、杏奈って下から慕われるよね」
「スパルタでも、凄く指導が的確だからね。俺も彼女に師事していたら、もっとプログラミング力がついていたんじゃないかって思う」
「いやいや。朱羽は独学でも杏奈に並んでいる双璧よ。2人喋っている内容、時々わからないもの。あの杏奈のプログラムについていけるのは、朱羽しかいないし。杏奈もそう思っているんじゃない? 杏奈の力を理解出来るのは朱羽だけだって」
すると朱羽は小さく笑う。
「三上さんには愛弟子がいるみたいだ」
「愛弟子?」
「うん。彼女が、向島から逃げていて、渉さんが見つけ出す前だったらしいけど、当時男子高生を拾って育てたことがあるって。あれ以上の筋がいい子はいなかったから、もう少ししたらシークレットムーンに勧誘してみるって」
「え、初耳。何歳くらいの愛弟子なの?」
「今26か27才くらいで、IT会社を経営しているようだ」
「ということは、同業の社長ということ?」
朱羽は頷いた。
同業か……。
あたしが彼の立場なら、いくら師匠の勧誘でも行きにくいなあ。
「結城さんが別口からそこの評判を聞いて、業務提携なりを持ちかけたらしいんだ。だけどそこの営業担当がかなり手強くて門前払いを食らい、社長に行き着かないとか」
「結城が駄目なの? だったら衣里とか、2人で行くとか……」
「結城さん曰く、どうも営業がイケメンで、女心を擽るような爽やかトークをする……らしくて。結城さんがなんとかしたいみたいだ」
朱羽は複雑そうに言うけれど、あたしは笑ってしまう。
衣里とイケメンの仲を心配して私情挟むなら、とっとと衣里を自分のものにしちゃえばいいのに。
「杏奈が間に入れば話は早いんじゃ?」
「三上さんが弟子だと結城さんに黙っていてくれって言われて。会社ごと社長を引き抜きたい彼女にも思うところがあるみたいだ」
ここのところWEB部が忙しくて、そんなことになっていたとは、知らなかった。

