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another storys
第18章 彼岸花【陽炎】
寝たと思ったのに、いきなり耳元で鷺の声がした。

「ねぇ、るいさん…」

頬をひと撫でされ、慌てて飛び起きる。

鷺を避けるように身を縮こめながら、観念して自分の魂胆を白状した。すると鷺は

「目あきの道理は俺には通じないよ?
俺には痘痕も見えないし、肌なんてヒトそれぞれだ。
ちょっとカサカサしてるくらい、大したことじゃない。…旦那の話、聞かせて?どのくらい一緒にいたの?」

と聞いてきた。
るいはぽつりぽつりと信吉の話をした。
話を聞き終えた鷺は、優しい顔で微笑む。
るいの手を取り、そっと撫でた。

「るいさん、あんたはよく気も付くし、優しい、いい女だ。俺は七日しか一緒にいないけど、そう思うよ。
病の前と後とで、あんたの中身のどこが変わったんだろう?
俺は変わってないんじゃないかと思う。
そしたらあんたの旦那は、一年も一緒に居て、あんたのどこを見てたんだろうね?
上っ面しか見てなかったんじゃないか?
だとしたら、そんな男離れて良かったよ。
…そう思わない?」

信吉との縁が切れたのは、自分でも良かったと思っている。でも、それを今の己が口に出して言うのは、ただの負け惜しみになる気がして、言えずにいた。

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