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another storys
第18章 彼岸花【陽炎】

久しぶりに、女として見られた気がして、嬉しかった。
だがやはり初対面の男を家に上げるのは憚られる。
だから断ったが、実はもう少し粘られると思っていたのに、あまりにあっさり引き下がられたから、何だ、他にも行くアテがあるんじゃないか、と悔しくも思った。
目が見えないからこその誘いだったのだろう。
簡単に家に上げて身体を許しても、この肌に触れれば気味悪がって逃げていくかもしれぬ。
その方がよっぽど辛い。
あんなに好きだ可愛いと繰り返し言った信吉だとて、半年もたたぬ間に心変わりしたのだ。
ましてやこの痘痕。
ボコボコとした質感は触れて心地よいものでもない。
めくらにまで袖にされたら、立つ瀬がない。
変な客のことなど忘れよう、そう思って後の仕事に打ち込んだのに。
客が引け、店を仕舞おうと外に出たら、その男は店先に座り込んでいた。
冬の寒空の下。
耳も鼻も真っ赤にして、着物の中で縮こまるようにしてガタガタと震えている。
「あんた…何でこんなとこに居んだい…?」
呆れて聞いたら、その男は、またあの人懐こい笑みで、
「行くトコないから」
と返してきた。
だがやはり初対面の男を家に上げるのは憚られる。
だから断ったが、実はもう少し粘られると思っていたのに、あまりにあっさり引き下がられたから、何だ、他にも行くアテがあるんじゃないか、と悔しくも思った。
目が見えないからこその誘いだったのだろう。
簡単に家に上げて身体を許しても、この肌に触れれば気味悪がって逃げていくかもしれぬ。
その方がよっぽど辛い。
あんなに好きだ可愛いと繰り返し言った信吉だとて、半年もたたぬ間に心変わりしたのだ。
ましてやこの痘痕。
ボコボコとした質感は触れて心地よいものでもない。
めくらにまで袖にされたら、立つ瀬がない。
変な客のことなど忘れよう、そう思って後の仕事に打ち込んだのに。
客が引け、店を仕舞おうと外に出たら、その男は店先に座り込んでいた。
冬の寒空の下。
耳も鼻も真っ赤にして、着物の中で縮こまるようにしてガタガタと震えている。
「あんた…何でこんなとこに居んだい…?」
呆れて聞いたら、その男は、またあの人懐こい笑みで、
「行くトコないから」
と返してきた。

