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どうか、私を愛してください。
第29章 幸せの崩壊。
「永一!」



「お母様!」


「美緒さん…?ダメ、美緒さん!美緒さんも逃げて!お願い!」


大声で叫んでも、私の声は群衆のパニックの声で消されてしまっていた。
やっと立ち上がることができたのに
永一君の側に行くことができない。



2人が言い争っている声が聞こえるけど
全部が全部は聞こえない。
だけど、パニックになった人たちが会場の外に出て行って
少しずつ静かになって、2人の会話が聞こえてきた。


「俺だって自分の子供を後継者にしたいんだよ…だからやりたくもないセックスして子供作ったんだよ…お前だって誠二とそうだったんだろ?跡取りのために好きでもない夫の弟に抱かれたんだろ?」


「そうです…跡取りのためと思って抱かれました。だけど誠二さんのこと、愛しているんです。弘樹さんと一緒にしないでください!」



「何…?この家だけでなく、嫁も狂ってる!こんな家終わりだな!!俺が終わらしてやるよ!!」


「お母様!!!」


美緒さんは力強く永一君を抱きしめたあと
思いっきり突き放した。
それから両手を広げて、暴走してくる弘樹さんを受け止めようとしていた。
その姿をみたら――誰だってこういったと思う。


天使みたいだ。



「美緒!!!」


誠二の声が聞こえた瞬間
美緒さんと誠二が一緒に倒れてしまった。
腰の辺りに弘樹さんが持っていた瓶が刺さっていて
かなり痛いはずなのに
誠二は美緒さんの頭を手で覆いかぶさって
床に倒れても痛くないように優しく抱きしめた姿を
私は一生忘れない。



誰かを愛するってことは
こういうことなんだってこと。



自分が傷ついても
愛おしい人を守る。
会社を守るために、子供を守るために、愛する人を守るために
私も、遥人に
私の将来を守るために
遥人は自分を傷つけたのかもしれない。
そう、思えた。
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