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第14章 朧夜の春

腕の中に大人しく収まっている彼女は、確かに自分を受け入れてくれているに違いなかった。
彼女の言葉を借りるなら『ほんとに嫌だと思っていれば、とっくに抵抗してる』はずだったから。
ようやく安堵の息を吐きかけ－疑問が残る。
「あの涙は…なに？」
自分を嫌がってないのが本当ならば。
何故彼女は泣いてしまったのだろう。
『コンタクトがずれてしまった』だなんて。
いくら自分でもそれが嘘なくらい分かってた。
様々考え巡らすが、結局ひとつしか思い浮かばない。
やっぱり少なからず、怖がらせてた？－すぐさま不安になってしまう。
愛する彼女の涙は、自分を激しく乱して当然だった。
一向にない返事も、自分の考えを肯定してるようで－秀王は抱き締めていた泉夏をそっと覗き込んだ。