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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「明日には向こうに行かなければならないけれど。でも数カ月後にはまた帰って来るから-」
-その時は、またこうして逢ってくれる?
次の約束を切り出した。
最大限の勇気を振り絞ったつもりだった。
しかし彼女は俯いたまま-何も言ってくれない。
「泉夏…?」
不安が増長し、秀王は彼女の名を恐々呼んだ。
「…逢わない」
「えっ?」
「帰って来たって…絶対逢ってなんかあげないんだからっ」
顔は上げぬまま、泉夏は呻くように叫んだ。
ベージュの絨毯が敷き詰められた床に、濃い色の染みがいくつも広がってゆく。
床を変化させてゆくものの正体が、初め分からなかった。
それが彼女の双眸から零れる涙なのだとようやく気付いた秀王は、言葉を失った。
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