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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「…先生はそんな事、きっと忘れているだろうけど」
消え入りそうに呟き、足元に視線を落とす。
いつまでも馬鹿みたいなのは私だけ。
きっと社交辞令か何かだっただけなのに。
「忘れるわけがない」
憂い始めた泉夏の耳に、秀王の躊躇いがちな声音が届く。
「…え?」
「似合っていると、確かにあの日言った」
「…」
「本心からそう思った。だから、そう言った」
真摯な告白を受け、泉夏は泣きそうな目で彼を見上げた。
「忘れてなんかいない」
深い優しさを漂わせた双眸が-笑っていた。
馬鹿じゃなかった。
私、ちっとも馬鹿じゃなかったみたい。
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