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Love adventure
第59章 奪還作戦
「綾波君に、あのバックルを欲しいって言われた時には驚いたよ~」

 浜田は目にも止まらぬ速さでタイピングをしながら首を振った。

「念のための用心のつもりだったんですがね……俺も、まさか、と思いました」

 綾波は、ほなみの白い手首にバックルを嵌めた時の、彼女の酔いに微睡む瞳を思い出す。
 彼女を怖い目に遇わせ、恐怖に泣かせたくないーーと、西本だけでなく、綾波も強く思っている。だが、彼女は自ら危険な恋へと飛び込んだのだ。
 智也にも知られた今、何が起きてもおかしくはない。
 夫婦に限らず、男女の痴情のもつれは、何らかの事件に発展する可能性が高い。
 逆上し、嫉妬に狂った人間は時としてとんでもない行動に出る。
 彼女を守ってやらなければ、と考えた末の御守りだった。 
 だが、ひょっとしたら、綾波は、彼女を束縛したいーーという願望があったのかも知れない。
 愛情と、歪んだ独占欲は紙一重だ――と、綾波は思った。

「旦那さんねえ……僕はそんな悪い人だとは思えないんだけどねえ……
 まあ、本当にほなみちゃんを好きなんだろうね」

 浜田はそう呟く。
 綾波は唇を噛んだ。

――ほなみは今どうしているのだろうか。

 危なっかしい足取りで歩く細い足首。
 長い髪から零れる甘い薫り。
 心地好く沈むアルトの声。
 抱き締めたくなる泣き顔。

 瞼を閉じて、一度貪ったほなみの唇を思った。

(あの時に、思い止まらず全てをぶつけていたら……)

 綾波は小さく笑った。
 そんな事をしたら、彼女を混乱させてしまうだけだ。

(俺はほなみを助け出し、祐樹と一緒になれるように動く。
 ほなみがそれを望んでいるのだから、俺はその手助けをするだけだ)



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