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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第33章 浜辺の約束
 由比ヶ浜を離れ、二人はいつものように鎌倉の町の賑わいを抜けて帰路を辿った。いつもと一つだけ違うのは、頼嗣が千草の手をしっかりと握りしめていることだけだ。まるで手を放せば千草がすぐに翼をひろげて逃げてしまうとでもいうかのように、頼嗣は千草の手をきつく握って放さない。
 千草はおずおずと傍らの頼嗣を見上げた。
―いつのまに、こんなに背が伸びてしまわれたのかしら。
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