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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
その四ヶ月後。
泉水は時橋に見守られて、無事男児を出産する。
暑い夏の最中の早朝、泉水は母となった。
予定日より十日遅れて漸く産気づき、時橋や光照が気を揉んでいるところ、夜半に急に腹痛を訴えたのである。が、それ以後は陣痛は次第に間隔が狭まり、産気づいてから、わずかに数時間という初産としては大変軽いものであった。
痛みに汗を流し、呻き声を噛み殺す泉水の手を時橋はずっと傍らで握り、励まし続けた。