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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
 夢五郎が言うと、途方もない夢が俄(にわか)に現実感を伴ってくるから不思議だ。どんな困難なことでも、夢五郎が〝大丈夫だ、姐さん〟と囁くだけで、容易く実現できるような気になる。もしかしたら―。
「夢売りって、人に元気を分けてあげる仕事なのかもしれませんね」
 泉水が囁くと、まだ庭を見ていた夢五郎が小首を傾げる。
「何だ? 何か言ったか」
 怪訝な表情の夢五郎に、泉水も微笑んだ。
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