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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第29章 《巻の壱―すれちがい―》
 その夜も泉水は一旦は夜伽を辞退した。気の進まぬことはあっても、実際に拒むことは滅多とない。というのも、拒めば、泰雅の機嫌がたちどころに悪しくなり、次の夜に更に辛い想いをしなければならないからだ。こんなことならば、少々気分が優れずとも、拒むのではなかった―と後悔することになる。
 辛い想いを幾度か経験していたから、少々のことでは辞退したりはしない。が、その夜の体調は本当に思わしくなかったのだ。前夜の寝不足、更にその前日まで月のものの障りがあったゆえ、尚更、気持ちも沈んでいた。
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