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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
お昼は約束通り奢りも兼ねて話さないといつまでもうるささかろう滝島と、いつもの定食屋に入った。


「何、食べる~?」


「マジ、奢り?何で?」


ニヤニヤ笑って、分かってるだろうに。


「とりあえず、頼めよ」


「一番高いのでもいいの?」


「……いいよ…」 


「うっそ~!流石、ヒナちゃん効果!?」


「お姉さ~ん!日替わり定食、2つ!」


「はいよ~!」


俺は、配膳のおばちゃんに、指を2本立てて注文した。


「あ~!秘伝のトロトロビーフシチュー、牛タン煮込みを頼もうとしたのに!」


「ボーナス出たら、頼めばいいだろ」 


俺はお茶をすすりながら、冷めた声で言い放った。


「そんな冷たいと、ヒナちゃんに言いつけてやる!」


「言えば~!てか、いつの間に…と、言うか何で俺を水越さんに紹介しようとしたんだよ?」


滝島はお絞りで、手を拭きながら


「ヒナちゃん、めっちゃかわええやんか~!」


「まあな…どうでもいいけど、なんちゃって関西弁止めろよ」


「俺の憧れなんだよ!」


何の憧れだよ?
滝島は、気にしてない様子で話し続けた。


「今時あんだけ純情で初々しい子いなくない?苦労もしてるし頑張り屋さんだし、純潔だし…」

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