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喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝


* * *


車のキーを一度取りに戻って、そのまま駐車場に向かった莉央。

私は公園の花壇のふちに腰掛けて、携帯を取り出した。

昨夜の着信履歴を呼びだして、そのまま電話をかける。


『はい』

「……順調よ。今から向かうわ」

『おぉ、あの低血圧をマジで引っ張り出したのか。
さすが男勝りの女だな』


私が状況報告をすると、電話の向こうで莉央の兄は笑った。
駅のホームらしく、声の後ろから電車の音が聞こえる。


『それに加えて、なんで俺まで呼び出したわけ?
買い物ドタキャンしたから、嫁の機嫌が悪いのなんのって』

「……本当にゴメン」

『ははは、冗談だよ。
昨日俺がお前に電話した時点で、なんか思いついたんだろ?』

「………」


顔を上げると、莉央の車が目の前で停まった。

私は深呼吸をして、最後に一言

電話の向こうの翔ちゃんに告げた。


「……翔ちゃんの可愛い弟が、大好きだから
私の想いを見届けてほしいの」





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