この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝

* * *
車のキーを一度取りに戻って、そのまま駐車場に向かった莉央。
私は公園の花壇のふちに腰掛けて、携帯を取り出した。
昨夜の着信履歴を呼びだして、そのまま電話をかける。
『はい』
「……順調よ。今から向かうわ」
『おぉ、あの低血圧をマジで引っ張り出したのか。
さすが男勝りの女だな』
私が状況報告をすると、電話の向こうで莉央の兄は笑った。
駅のホームらしく、声の後ろから電車の音が聞こえる。
『それに加えて、なんで俺まで呼び出したわけ?
買い物ドタキャンしたから、嫁の機嫌が悪いのなんのって』
「……本当にゴメン」
『ははは、冗談だよ。
昨日俺がお前に電話した時点で、なんか思いついたんだろ?』
「………」
顔を上げると、莉央の車が目の前で停まった。
私は深呼吸をして、最後に一言
電話の向こうの翔ちゃんに告げた。
「……翔ちゃんの可愛い弟が、大好きだから
私の想いを見届けてほしいの」

