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夢のうた~花のように風のように生きて~
第2章 《悲劇の始まり》
―それから、お前に一つだけ言っておかなければならないことがあります。むろん、お前はお千香との縁談を承知したのだから、この秘密を打ち明けたとて、何の不都合もないと思うが。
そう前置きして、政右衛門は続けた。
―この娘(こ)には、さる事情があって、たとえ祝言を挙げても、夫婦の交わりは叶わぬのだよ。
このときだけ、定市が控え目に口を開いた。
―その理由とやらを今ここでお伺いしてもよろしうこざいましょうか。