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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 サヨンは眼を瞠った。トンジュの逞しい身体がすぐ眼前にあった。うっすらと毛に覆われた均整の取れた身体から、かすかな香りがする。それは山の森を吹き渡る風の匂い、或いは冬なおたっぷりと青葉を茂らせる大木の香りであった。
 知らぬ間に、サヨンは眼を閉じて、うっとりと男の香りに浸っていた。
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