この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~散花~
第32章 朝見

「おもてをあげよ」
息がかかるほどの近さで命令される。
玉蘭は口を固く引き結んで目を上げた。
皇太后が、そこに立っている。
金銀の簪を高髻に挿し、耳には玉の環。首筋や胸元をなまめかしく開いて着こなした真紅の繍衣は、まるで燃えさかる焔のようだ。
「ふむ……」
皇太后が眉を寄せた。
「どこかで見た顔だったか」
(え…?)
玉蘭は耳を疑った。
どうやら皇太后は、半月前の仕置きの相手が玉蘭だとは気づいていないらしい。
皇太后にとって、言い掛かりをつけられた娘を虐げるのは単なる暇潰し。
その娘の顔も名も興味はなく、覚える手間すら取る気はないのだ。

