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第10章 俺の弟は…
「でさー、渚がまた今度って…」

デレデレと締まりない顔をしている翔の片手には、携帯電話が握られている。


その携帯からは、

『……尻に敷かれてる自慢?』

苛立った弟の声が零れる。


「いや、違うって!」

『じゃあ何だよ?俺も暇じゃねぇんだけど』

すぐにでも切られそうな雰囲気に、翔は慌てて本題を持ち出した。


「あー…その、お前らの住んでるマンション……さ……」

『は?』

「家賃いくら?空きある?」

『……まさか兄貴……』

勘のいい琉の声色は、兄の言葉に不機嫌さを増していた。


「お、おう。俺、実家出ようと思って!」

一大決心を打ち明けた兄に、

『家事の一切が出来ない兄貴が?』

弟が掛けた言葉は冷たい。


「こ、これから覚えるんだよ」

兄の言い訳を鼻で笑った琉。

『何でうちのマンション事情を聞くんだよ?』

牽制の意味も込めて低い声で言った。


「し、知ってる所の方がいろいろと安心だろ?」

何かあった時に頼れるし…という下心を悟られないように言ったのに、

『愛里咲の飯は食わせねぇからな!他当たれ!』

プツッ…

勢い良く切られた電話に、弟に全てを悟られている気がしてくる。


「─────冷たい弟だな‼︎ 」

八つ当たりに携帯をベッドに投げ捨て、翔もまたベッドへとうつ伏せにダイブした。




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