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父に刻印された身体
第5章 痛みが理性を狂わせる夜
そして不自由さの中で、何より私を精神的に追い詰めたのが「シャンプー」だった。
左手が使えないということが、これほどまでに女としての清潔感を奪うものだとは思いもしなかった。
昨夜、お風呂場で繰り広げた不毛な闘いを思い出す。濡らしてはいけない左手には、買い物袋をいくつも巻きつけ、ガムテープでぐるぐる巻きにして固めてある。てるてる坊主のような間抜けな腕。
右手だけでシャンプーのポンプを押し、滑る髪に泡を立てようとしたけれど、片手では頭皮まで指が届かない。泡立たないまま髪同士が固く絡まり、無理に指を解こうとすれば、痛絶な軋みとともに髪が引き抜かれそうになる。

すすぎすらも不十分なまま、濡れて重たくなった黒髪が、私の無防備な首筋や鎖骨にベッタリとへばりつき、蛇のような不快な冷たさとなって肌を這っていく。
あまりの情けなさと悔しさに目元が熱くなり、喉の奥へこみ上げる惨めな涙をぐっと飲み込みながら、私は歯を食いしばって片手だけで石鹸分を洗い流した。
けれど、そうして半ば投げやりに終わらせた頭皮には、すっきりしない気持ち悪さが残ったままで、乾かす段になっても地獄のようなもどかしさは終わらない。
右腕一本でドライヤーを持ち上げても、もう片方の手で髪を掻き分けることができないため、温風はただ表面の毛先を虚しく撫でるだけ。特に左側のうなじの奥には、風の欠片すら届いてくれないのだ。
結局、半乾きのまばらな髪から立ち上る、不快な湿りと生温かい匂いを肌で感じながら、私は諦めるように重い体をベッドへ投げ出し、布団に突っ伏すしかなかった。
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