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如月茜(きさらぎ あかね)
第3章 シーン3 重すぎる救いの光と少女の切実な涙
【母親恵麻】
膝の上でぎゅっと握りしめた拳を震わせた。
夫が残した数千万円という途方もない借金。
連日ドアを叩く強面の男たち。明日の食べる米すらどうなるか分からない絶望の中。
彼女の頭にあったのは「どうやってこの娘を守ればいいのか」という恐怖だけだった。
夫に逃げられ、家を追われ、昼は惣菜を売り、夜は居酒屋の皿を洗う。身を削って働いても、借金の利息すら返せない現実に押しつぶされそうになっていた。
【娘美咲】
中学1年生の美咲は、母親の背中に寄り添っている。
現代のネットや情報に囲まれて育った彼女は、大人の裏表や世間の残酷さを、年齢以上に敏感に察知していた。パパが借金を作って消えたときから、世の中の大人なんて信用できないと思っていた。
(なのに、この男はどう?。)
初対面の私たちに「家族になる」「すべてを預けてほしい」なんて、まるで少女漫画の主人公みたいなセリフを涼しい顔して言い放つ。
(私たちから何を奪う気なの……? 体? それとも、残された…わずかなプライド?)
警戒心のトゲをめいっぱい逆立て、美咲は母親を守るように一歩前に出ていた。
【そして2人の決断】
彼が言っていることはすべて正しかった。
私たちが自力でどうにかできる限界を、この人は優しく、けれどハッキリと見抜いていた。
先に心の堤防を決壊したのは母親恵麻だった。
その「甘美すぎる救い」に、すがりたい衝動をどうしても抑えられなかった。
震える唇を開き、恵麻は絞り出すように言った。
「……お願いします。私たちを……助けてください……」
その言葉にすぐさま同調するよう、娘美咲も心で叫んでいた。
(パパは私たちを置いて逃げたのに……この人は、見ず知らずの私たちのために、どうしてここまで……)
張り詰めていた糸がプツリと切れた瞬間、2人の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
悔しさと、これ以上泣いてばかりの不安、そして、やっと訪れた圧倒的な安心感。
複雑な感情が入り交じり、彼女達はそれ以上、茜の救いの提案に反論する余裕はなかった。

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