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如月茜(きさらぎ あかね)
第2章 シーン2 家長宣言と迷える子羊達

「……これからは、家族として一緒に歩んでいこう」

茜のその爽やかすぎる一言は、静まり返ったボロ借家の空気を、文字通り「別の意味で」フリーズさせた。
恵麻の脳内で、巨大なサイレンがけたたましく鳴り響いていた。


【子羊母恵麻さんの心の叫び】
(……家族? いま、この人、なんとおっしゃいました? )
(家族って、あの「家族」ですか? 血縁とか戸籍とか法律とか、そういう面倒くさいアレを飛び越えて、いきなりこのボロ借家に爆誕するニューファミリーの概念ですか?)
(待って、まてまてっ 待って――っ!!)
心の中の恵麻が、畳の上で盛大にずっこけて頭を抱えている。

夫の裕二が借金を残して夜逃げした。今日の食べる米もない。
借金取りに怯えて死にそうになっていた。――ここまでの悲劇のヒロインロードはどこへ行ったの~。

目の前にいるのは、昭和の木造長屋には似合わないほどパリッとしたスーツを着こなした、圧倒的イケメン男性(26歳)。
しかも長身イケメンな彼が、なぜか我が家の「家長」の座に座ろうとしている。

(えっ? 私、夫に逃げられた未亡人(仮)だよね!? なのに、ものの数十分で「新しい大黒柱」が降臨したの!? )

(展開がマッハすぎて、私のCPU(脳みそ)の処理速度が完全に追いついてないんですけど――っ!? )
(もしかして私、夢でも見てるの!? それとも極限状態が見せている幻覚!?)

(いや待って、足元の靴下に穴が開いてる恥ずかしさですら、もうどうでもよくなるレベルのパワーワードだしぃ…「家族として」って!!)



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