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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山
穂乃果はまだ八歳だったあの日のことを思い出していた。
「これ、美味しい!」
「それはタケノコ。美桜ちゃん初めて?」
穂乃果の母が言う。
昨日穂乃果の家に、たくさんのタケノコが届いた。母が美桜とその両親を呼んで、タケノコの煮物や炊き込みご飯を振舞っていた。
美桜は初めて食べるタケノコに感動し、バクバクと口に放り込んでいた。
「また食べたい!」
「食いしん坊美桜。山にいっぱい生えてるよ。でも早く採らないと伸びて竹になっちゃうんだよ」
夕食のあとの会話だった。穂乃果の母は洗い物へ、父は風呂。美桜の母は夕飯の礼に一回で鍋に入りきらなかったタケノコをゆがいていて、美桜の父は野球観戦しながら珈琲を飲んでいた。あの日の夕食のあとのそれぞれの様子は、なぜか鮮明に覚えている。
そのあとの一夜が悪夢だったから、怖い記憶と一緒に忘れられずにいるんだと穂乃果は思った。
「竹は、食べられないの?」
「すごく硬いの! 歯が折れちゃうよ!」
「そうなる前に採ればいいの?」
「うん」
「……ほのちゃんもタケノコ好き?」
「うん、もちろん大好きだよ」
美桜の顔がぱあっと明るくなった。
どこの山にあるか聞かれ、穂乃果は適当に答えた。
まさか、その日の夜遅く、美桜がタケノコを採りに一人で山に入ってしまうなんて、その時の穂乃果は考えもしなかったのだ。

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