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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山

 美桜にはもう通学路では追いつけなかった。
 穂乃果が美桜の家に寄ると、美桜はいつものように、居間のテーブルでドラゴンの絵を描いていた。

「美桜」

 返事はない。いつもだったら何度も呼ぶが、穂乃果は今日はそうしなかった。無言で画用紙を美桜の前から奪う。
 はっとしたように、美桜は顔をあげた。

「ほのちゃん!」

 穂乃果の姿を見つけるなり、美桜の顔がぱーっと明るくなる。

「日曜、山に入る許可がおりたの、ママから! ほのちゃんも一緒に行こう!」
「行かない」

 間髪入れずにそう返した。

「日曜はもっと大切な用事があるんじゃない? 花井先生へのプレゼント選びに行こって、クラスの子に誘われてなかった?」
「……誘われたけど、行かないって言ったもん。ドラゴンを探しに行くの! 今度こそ会えるかもしれないし! 寒くなってくるから、今週の日曜が最後だよって、ママと約束したんだよ!」

 ドラゴンを探しに山に入るには、いくつもあるルールに必ず従わなければならない。
 一人では行かない。当日の朝の天気予報で一日晴れでなくてはいけないし、降水確率が10%でもあったら諦める。陽が傾き始めたらすぐ帰る。これは季節により時間が異なる。暑い日、寒い日、風が強い日はもちろんダメ。他にもルールはたくさんあった。
 全て美桜の両親が決めたものだ。
 だからなかなか、山に入っていいという許可が下りないのは知っている。
 だが、そもそも山に入る動機自体がおかしいと穂乃果は思う。
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