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明君のお母さんと僕
第2章 麦わら帽子
それに今日は白くてふんわりとしたワンピースを着ていて、清楚なお嬢様って感じだけど、細い首にはゴールドのネックレスが巻かれていて、僕はそこに明君のお母さんに「大人の女の人」を強く感じた。
そういえば、僕はさっきからほとんど喋れていない。「はい」「あ、お構いなく」「すいません」とかそんな言葉しか言えていない。この前もそうだった。
「可愛いね、この麦わら帽子」
ふいに明君のお母さんが僕の膝の上にあった麦わら帽子をそっと奪い取った。
両手で麦わら帽子を掴み、ツバの部分にあしらわれた緑色のリボンを見ている。
「そうですか? 西友で買った安物ですけど……」
「へえ、そうなんだ。でも可愛いよ。私もこういうの、欲しいなぁ」
明君のお母さんは僕の麦わら帽子を手に持ったまま、真横の椅子に腰かけてきた。
こんなに近い距離になるのは初めてのことで、僕は胸がトクンと高鳴った。ふわっと、夏みかんのような香りがした。
でも、どうしてだろう。明君のお母さんがすぐそばにいて、手を伸ばせば、その体に触れられる距離になった途端、僕の中で止まっていた時間が突如動き始めた。
「ううっ」
明君……。どうして死んじゃったの。
僕は叱られること以外で泣いたことがなかった。
それなのに明君のお母さんと二人だけの空間にいると、僕はこみあげてきてしまった。
僕はずっと我慢していたのだ、と今更ながら気づいた。
「おおおおおおお……」
いっぱい溜め込んでいたせいか、泣くというより唸り声になってしまう。
ぐるるっと頭の中で獣の咆哮のような音が何度も何度も鳴り響く。魔物が現れて、僕の閉じた口を無理やり広げさせるのだ。必死に抵抗しても抗えず、唇が緩み始めると、勝手に嗚咽が漏れてくる。
「おおうっ、おううっ……」
呻き始めた僕の傍で、明君のお母さんは何も言わなかった。僕なんかより、明君のお母さんのほうがずっと苦しいことは分かっているけど、今は吐き出さないと苦しかった。
僕はこの一週間を思い出す。
そういえば、僕はさっきからほとんど喋れていない。「はい」「あ、お構いなく」「すいません」とかそんな言葉しか言えていない。この前もそうだった。
「可愛いね、この麦わら帽子」
ふいに明君のお母さんが僕の膝の上にあった麦わら帽子をそっと奪い取った。
両手で麦わら帽子を掴み、ツバの部分にあしらわれた緑色のリボンを見ている。
「そうですか? 西友で買った安物ですけど……」
「へえ、そうなんだ。でも可愛いよ。私もこういうの、欲しいなぁ」
明君のお母さんは僕の麦わら帽子を手に持ったまま、真横の椅子に腰かけてきた。
こんなに近い距離になるのは初めてのことで、僕は胸がトクンと高鳴った。ふわっと、夏みかんのような香りがした。
でも、どうしてだろう。明君のお母さんがすぐそばにいて、手を伸ばせば、その体に触れられる距離になった途端、僕の中で止まっていた時間が突如動き始めた。
「ううっ」
明君……。どうして死んじゃったの。
僕は叱られること以外で泣いたことがなかった。
それなのに明君のお母さんと二人だけの空間にいると、僕はこみあげてきてしまった。
僕はずっと我慢していたのだ、と今更ながら気づいた。
「おおおおおおお……」
いっぱい溜め込んでいたせいか、泣くというより唸り声になってしまう。
ぐるるっと頭の中で獣の咆哮のような音が何度も何度も鳴り響く。魔物が現れて、僕の閉じた口を無理やり広げさせるのだ。必死に抵抗しても抗えず、唇が緩み始めると、勝手に嗚咽が漏れてくる。
「おおうっ、おううっ……」
呻き始めた僕の傍で、明君のお母さんは何も言わなかった。僕なんかより、明君のお母さんのほうがずっと苦しいことは分かっているけど、今は吐き出さないと苦しかった。
僕はこの一週間を思い出す。

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