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智恵の輪
第1章 同僚の距離
和真は智恵が既婚者であることを知っていたが、まさか離婚していたとは想像もしなかった。
「そうだったんですね…」
彼は当たり障りのない返事をするだけに留めていた。
和真の背後を男性客二人と舞が通り過ぎていく。
店の出入口の扉が開いて、三人が外に出た。
和真はその姿を目で追っていた。
智恵は離婚したことを話したかったのだと、だから自分は今夜誘われたのだと、和真はようやく気づいた。
小さな声だった。
「和真さん…」
和真は声のしたほうへ振り向いた。
智恵は両腕をカウンターに預け、こちらへ身を乗り出していた。和真がその意味を考えるより早く、智恵の顔が近づいてくる。
次の瞬間、その唇が和真の唇に重なった。
突然のことに、和真は体を動かせなかった。カウンターを挟んだまま、智恵は目を閉じ、唇を重ねていた。触れているのは唇だけだった。それでも、彼女が自分から越えてきた距離の重さは、十分に伝わった。
やがて智恵の唇が離れた。けれど、顔は近いままだった。
目を開いた智恵が、戸惑う和真を見つめる。
片方の手は、まだカウンターの上に置かれていた。
「そうだったんですね…」
彼は当たり障りのない返事をするだけに留めていた。
和真の背後を男性客二人と舞が通り過ぎていく。
店の出入口の扉が開いて、三人が外に出た。
和真はその姿を目で追っていた。
智恵は離婚したことを話したかったのだと、だから自分は今夜誘われたのだと、和真はようやく気づいた。
小さな声だった。
「和真さん…」
和真は声のしたほうへ振り向いた。
智恵は両腕をカウンターに預け、こちらへ身を乗り出していた。和真がその意味を考えるより早く、智恵の顔が近づいてくる。
次の瞬間、その唇が和真の唇に重なった。
突然のことに、和真は体を動かせなかった。カウンターを挟んだまま、智恵は目を閉じ、唇を重ねていた。触れているのは唇だけだった。それでも、彼女が自分から越えてきた距離の重さは、十分に伝わった。
やがて智恵の唇が離れた。けれど、顔は近いままだった。
目を開いた智恵が、戸惑う和真を見つめる。
片方の手は、まだカウンターの上に置かれていた。

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