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スイカ割りを、もう一度
第1章 スイカ割りを、もう一度
翌日、四人お見舞いに来てくれた。髪の長い女の子。ポニーテールの女の子。小柄な男の子とノッポな男の子。みんな同級生らしい。
「私たちのこと、覚えてる?」
「……ごめんなさい」
あたしは素直に謝った。友達?
一人一人丁寧に名前を名乗ってあたしとであろうエピソードを話してくれたけど、なんにもわからない。
「ごめんね梨華ちゃん。あの日、スイカ割りに誘わなければこんなことには……」
「ごめんな」
「頭、痛む?」
「早く思い出して、また一緒に遊ぼう」
「……え?」
口々に言い、頭を下げていく同級生の子たち。
「スイカ割りした時のことも覚えてないよな?」
そう小柄な男子生徒。
髪の長い華やかな顔立ちの女の子が、あたしをじっと見つめて言った。
「梨華ちゃんが転んで頭を打った日、一緒にスイカ割りをしたのは私たちなんだよ」
その言葉を聞いた時、青いビニールシートと真ん中に置かれた大きなスイカ、川が流れるざああ、という音が、微かに脳裏に浮かんだ。
みんなが帰ったあと、みんなの言葉を反芻してあたしは一人口元を綻ばせた。
待ってるから。絶対思い出して。俺たち友達だよ。退院したら、またスイカ割りやろうな。
口々に励ましの言葉をくれる、同級生達。
あたしの胸は少しほっこりした。まだ思い出せないけど、少しずつ思い出せそうな気配がする。
早く元気になって、またみんなと遊びたい。
家族のことも、友達のことも、自分のことも、全部思い出したい。
そう願って、その日は寝た。
脳波を調べたり、いろいろな検査をして、あたしは三日後に退院していい、と言われた。
頭の痛みも少しずつ弱くなっている。
何日めだったか、病室の外に警察の人がきているのが見えた。ドアが少しだけ開いていたのだ。あたしと話したい、と言っているのが聞こえたけれど、病院の先生はだめだと言った。記憶喪失だから?
「しかし、あれはもしかしたら……」
「今は記憶を失っているんです。もう少ししたら思い出すかもしれないですし、お待ちください。本人の心身への負担も考えていただいて……」
そこでドアが少し開いてしまっていることに気付いた先生が閉めてしまったため、声が小さくなって、何を言っているかまでは聞き取れなくなった。
もう少ししたら思い出す。本当に?
あたしの心は少し軽くなった。

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