この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
素敵な笑顔
第1章 音 清らかな音
そのひとは、いつもおばあちゃんのそばにいた。
表情はまったくわからない。
着ているものも、わかるのは色がグレーってことだけで、
それがスーツなのかスウェットなのかもよくわからない。
すりガラスを通して見ている感じで、
体格と立ち姿でなんとか男のひとだとわかる。
わたしの霊感なんて、その程度だ。
いつも一緒にいても、どんなに近くにいても、
埋められない寂しさを抱えているようだった。
まるでおばあちゃんの感情が、具現化されているように。
おばあちゃんもまた、
いつも悲しみの雨に打たれているような、
全身ずぶ濡れの姿に見えたから。
たとえ、笑顔を見せてくれているときでも。
おばあちゃんはいつも、
素敵な笑顔を見せてくれていた。
それなのに、わたしの思い出のなかでおばあちゃんは、
一度も笑ったことがないような、
沈んだ表情を浮かべている。
わたしに向けてくれていた笑顔の裏側に、
おばあちゃんはそんな感情を隠していた。
いくら温かく重ね着をしても、
凍える心は安らぎを失ったまま。
そんな寂しさ、悲しみ。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


